干支とは

干支とは

干支(えと)とは、十干(じっかん)と十二支(じゅうにし)を組み合わせた暦の体系です。この組み合わせは全部で60通りあり(六十干支)、かつては年月日や時刻、方位などを表すために広く用いられてきました。

「干支」という言葉は、「十干」の「干」と「十二支」の「支」を合わせた呼び名です。十干を木の「幹」、十二支を「枝」にたとえる表現が有名ですが、これはもともとの文字の成り立ちというより、後世の解釈の一つです。もともとは年月日や時刻を表す記号でしたが、やがて陰陽五行思想などと結び付き、自然界の移り変わりや時間の循環を表す体系として発展していきました。

また、十二支にはのちに動物が当てはめられるようになり、ねずみ・うし・とらなどの親しみやすいイメージが定着したことで、私たちの暮らしにより身近なものとなっていきました。

こうした長い歴史の中で実用的な暦や時間・方位の体系として発展してきた干支は、日本の文化や人々の暮らしの中に深く根付いています。現在でも、年賀状のデザインや占い、還暦といった節目の行事など、私たちの身近な文化として大切に受け継がれています。

歴史

干支の歴史は非常に古く、中国の殷の時代(紀元前15世紀〜紀元前11世紀頃)の甲骨文字には、すでに十干の記録や、十二支に関係すると考えられる記録が残されています。

当時は主に日の順序を表すために用いられていましたが、時代とともに月や年、時間、方位を表すためにも応用されるようになり、やがて十干と十二支を組み合わせた「六十干支」の体系が確立されました。

日本には、漢字や暦の制度とともに中国から伝来し、飛鳥時代頃にはすでに暦や日時の記録として使われていたとされています。

十干(じっかん)とは

十干は、「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」の10種類からなる体系です。後世に陰陽五行思想と結び付き、自然界の構成要素である「木・火・土・金・水」の5つに、それぞれ陽(兄)と陰(弟)を割り当てて説明されるようになりました。

十二支(じゅうにし)とは

十二支は、「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」の12種類からなる体系です。もともとは年月日や時刻を表すための記号でしたが、のちに「時間」や「方角」を表す単位としても広く活用されるようになりました。

  • 時間:「子」は夜11時頃〜深夜1時頃、「午」は午前11時頃〜午後1時頃を表します。「午前」「午後」「正午」という言葉には、「午」の刻を基準とした歴史的な名残があります。
  • 方角:「子」は北、「午」は南、「卯」は東、「酉」は西といったように、全方位を12等分して示していました。

六十干支(ろくじっかんし)とは

十干(10種類)と十二支(12種類)の周期が一致する最小公倍数は60であるため、60通りの組み合わせが生まれます。これを「六十干支(ろくじっかんし)」と呼びます。年であれば60年で一巡し、日であれば60日周期で巡っていく仕組みになっています。

年月日時の干支

干支のサイクルは「年」だけでなく、「年・月・日・時(時間)」のそれぞれに割り当てられ、あらゆる時間の流れを立体的に捉える歴法として使われてきました

  • 年の干支(年干支):私たちが最も馴染み深いもので、60年で一巡します。
  • 月の干支(月干支):5年で一巡する仕組みになっており、かつては季節の移り変わりや農作業の目安でした。
  • 日の干支(日干支):最も古くから途切れることなく続いてきた60日周期のサイクルです。
  • 時の干支(時干支):一日を12等分した時間帯と十干を組み合わせた、2時間ごとの細かいサイクルです。

年と月の干支が切り替わる仕組み

年や月の干支が切り替わるタイミングには、私たちが普段使っているカレンダーを基準にする「暦月(れきげつ)」と、伝統的な暦や占いで使われる「節月(せつげつ)」という2つの異なる考え方があります。

暦月(れきげつ)

現代の私たちが使う新暦の1日〜末日(またはかつての旧暦の1日)をそのまま区切りとする方法です。

  • 年の変化:1月1日(元日)を境に、新しい年の干支へと切り替わります。一般的なカレンダーや年賀状など、日常生活で広く使われている馴染み深い基準です。
  • 月の変化:カレンダー通りの1日を月の初めとして、その月の干支をあてはめて切り替えます。

節月(せつげつ)

四柱推命などの占いや古来の暦法において重視される、季節の節目を基準とする方法です。

  • 年の変化:1月1日ではなく、「立春(毎年2月4日前後)」の瞬間を年の切り替わりとします。そのため、1月1日から立春の前日までに生まれた人は、干支の上では前年の生まれとなります。
  • 月の変化:1日〜末日というカレンダー上の月ではなく、「立春」「啓蟄」「清明」といった二十四節気の「節気」が訪れる日を境に、月の干支が切り替わります。

干支と十二支の一覧

干支

十干 音読み 訓読み 意味・要素
甲 こう きのえ 木の兄(陽)
乙 おつ きのと 木の弟(陰)
丙 へい ひのえ 火の兄(陽)
丁 てい ひのと 火の弟(陰)
戊 ぼ つちのえ 土の兄(陽)
己 き つちのと 土の弟(陰)
庚 こう かのえ 金の兄(陽)
辛 しん かのと 金の弟(陰)
壬 じん みずのえ 水の兄(陽)
癸 き みずのと 水の弟(陰)

十二支

十二支 音読み 訓読み 動物 時間 方角
子 し ね ねずみ 夜11時
〜
深夜1時
北
丑 ちゅう うし うし 深夜1時
〜
朝3時
北北東
寅 いん とら とら 朝3時
〜
朝5時
東北東
卯 ぼう う うさぎ 朝5時
〜
朝7時
東
辰 しん たつ たつ 朝7時
〜
午前9時
東南東
巳 し み へび 午前9時
〜
午前11時
南南東
午 ご うま うま 午前11時
〜
午後1時
南
未 び ひつじ ひつじ 午後1時
〜
午後3時
南南西
申 しん さる さる 午後3時
〜
午後5時
西南西
酉 ゆう とり とり 午後5時
〜
午後7時
西
戌 じゅつ いぬ いぬ 夜7時
〜
夜9時
西北西
亥 がい い いのしし 夜9時
〜
夜11時
北北西

干支にまつわるエピソード

長い歴史の中で、干支には人々の暮らしや信仰、伝承が深く結びついてきました。代表的なエピソードをいくつかご紹介します。

還暦(かんれき)

生まれた年の十干十二支が、ちょうど60年かけて再び自分のもとに巡ってくることを指します。「暦が還る」というめでたい意味から、人生の大きな節目としてお祝いされてきました。

甲子(きのえね)と「甲子園」

60干支の最初の組み合わせである「甲子」は、縁起の良い組み合わせとして知られています。有名な「阪神甲子園球場」は、球場が完成した大正13年(1924年)が甲子の年だったことにちなみ、「縁起の良い始まりの年にしよう」という願いを込めて名付けられました。

庚申(こうしん)と「庚申信仰」

60日に1度めぐってくる庚申の日には、人の体内にいる「三尸(さんし)の虫」が眠っている間に天へ昇って悪事を告げ口するという言い伝えがありました。これを防ぐため、人々が眠らずに夜を明かす「庚申待(こうしんまち)」という行事が各地で行われました。

丙午(ひのえうま)の迷信

陰陽五行説では、十干の「丙」と十二支の「午」がともに火の性質を持つため、丙午の年は火の力が強い年とされました。江戸時代以降、「丙午生まれの女性は気性が激しい」という迷信が広まり、直近では1966年(昭和41年)に出生数が大きく減少するという社会現象が起きました。

「犬猿の仲」の俗信

犬と猿が仲悪いとされる俗信を「犬猿の仲」と呼びますが、これは厳密には十二支の並びが直接の由来ではありません。