日に日に寒さが増してくる今日この頃。
日が落ちるのが早くなったなぁ、なんて感じませんか。
2021年12月22日は冬至です。

冬至とは

冬至とは、1年を24等分して季節を表す二十四節気のなかの節気のひとつ。
今年は12月22日〜翌年の年1月4日までです。
1年の間で最も太陽が出ている時間が短く、夜が長くなります。
冬至と対になるのが6月の夏至ですが、なんと日照時間の差は5時間もあるそうです。
北半球では正午の太陽の位置が最も低くなりますが、この日を境にだんだんと日が長くなっていくので、太陽が生まれ変わる日とされています。

冬至の日には、かぼちゃや小豆粥など栄養のあるものを食べてゆず湯に入りますが、そんな古くからの習わしにはさまざまな言い伝えがあるのです。

冬至とクリスマス

海外はというと、キリスト教が伝わる前の北欧では、冬至に太陽の復活を祝う「ユール」というゲルマン民族のお祭りがありました。
薪を12日間燃やし続け、食べ物や飲み物を持ち寄ってお祝いしたそうです。
それが後に広まりだしたキリスト教文化と結びつき、クリスマスへ変化していったといわれています。
薪に似せたチョコレートケーキ「ブッシュ・ド・ノエル」もその名残なのですね。

一陽来復(いちようらいふく)

冬至を表す言葉に「一陽来復」があります。
陰極まりて陽となす。
太陽の力が弱まる陰の状態から、再び太陽の力が強くなって陽の状態へ転じるという意味です。
冬が去って春が来ること、悪いことが続いたあとで幸運に向かうこと、という意味もあります。

また冬至は、日照時間が最も短いことから「死に最も近い日」とも考えられていました。
太陽の力が弱まると生命を育む太陽の恩恵を受けにくいことから、無病息災を祈るさまざまな習わしが生まれました。
冬至にかぼちゃを食べたりゆず湯に入ったりするのは、そういった習わしのひとつなのです。

一陽来復のお守り

神社によっては、冬至から立春にかけて一陽来復のお守りを置いているところもあります。
東京早稲田の穴八幡宮では、冬至の日に「冬至祭」がおこなわれ、2月3日の節分まで一陽来復のお守りやお札が参拝者に領布されます。
お守りやお札は、冬至、大晦日、節分のいずれかの深夜0時に、その年の定められた恵方に向けてお祀りするとお金繰りがよくなるそうですよ。
毎年、冬至の日には長蛇の列ができるほど、商売繁盛や金運のお守りとして人気があるようです。

冬至の七十二候

二十四節気のひとつの節気をさらに3つに分けたのが七十二候で、気候や動植物のようすを短い言葉で表したものです。
冬至の期間は、冬至の日から次の節気である小寒までの15日間。
七十二候は5日ごとに移っていきますが、冬至の七十二候は「乃東生」「麋角解」「雪下出麦」です。

初候【乃東生】なつかれくさしょうず

夏枯草が芽を出す頃。
夏枯草(かこうそう)は冬至の頃に芽を出す珍しい植物です。
紫色に咲いた花が夏至の頃には黒色化し、枯れたように見えることから夏枯草と名付けられました。
夏枯草は、シソ科の多年草で古くから漢方薬として用いられており、花穂が矢を入れる靭に似ていることから靭草(うつぼぐさ)とも呼ばれています。

次候【麋角解】さわしかのつのおつる

大鹿の角が抜け落ちる頃。
メスの鹿は角が生えないのですが、雄の鹿は1年に1度、角が生え変わります。
枝分かれして大きくなった角が、根元から自然にポロッと抜け落ちるのがちょうど冬至の頃で、また春になると新しい角が生えてきます。
さわしかとは、大鹿の一種でトナカイの仲間であるヘラジカのことだとされています。

末候【雪下出麦】ゆきわたりてむぎのびる

降り積もった雪の下で麦が芽を出し始める頃。
麦は、秋に種をまいて、翌年の初夏に収穫の時期を迎える越年草です。
一面が雪に覆われた極寒の中でも、その下では新しい麦の芽が顔を出し始め、ひっそりと春になるのを待っています。
実は、早春に芽を出した頃に、日本独自の風習「麦踏み」が行われます。
霜柱で浮き上がった土を踏み固めることで凍霜害を防いだり、根の張りをよくしたりするのです。

寒い季節の到来を感じさせる言葉が並びますね。
この寒い時期に新しい命の芽吹きを見て、春への希望を膨らませていたのでしょうか。

冬至の食べ物

冬至にかぼちゃや小豆粥を食べるという風習には、さまざまな言い伝えがあります。
冬至には大子(おおいこ)という神様がやってきて、里村をめぐって春を呼び戻すといわれていることから、お供えしたものを神様と一緒にいただくという風習になりました。

かぼちゃ

冬至にかぼちゃを食べると中風にならない、風邪をひかないといわれています。
中風とは、脳卒中などで体が半身不随になるような病気のことで、悪い風にあたって起こると考えられていました。

かぼちゃは夏から秋にかけて収穫されますが、長期保存ができて栄養価が落ちにくいため、食べるものが少ない冬には栄養を補うのに重宝したのでしょう。
「冬至かぼちゃに年とらせるな」ということわざには、いくら保存が効くといっても冬至までが限界で、それを過ぎれば傷んで味も落ちてしまうので早く食べましょうという意味があります。

小豆粥

小豆粥を食べるのは、小豆の赤色が邪気を祓う色と考えられているからです。
小豆は栄養価が高く、疲労回復、抗酸化作用、肩こりなどに効果があり、風邪をひかない、二日酔いになりにくいともいわれています。

「いとこ煮」は、富山県、奈良県、山口県で食べられている小豆と根菜を煮た郷土料理です。
栄養価の高いかぼちゃと小豆を一緒に煮れば、おいしくいただくことができますよ。

こんにゃく

そのほかに、こんにゃくを食べる風習もあります。
「砂おろし」といって、こんにゃくを食べると体の中に溜まった砂(悪いもの)が外に出されるといわれています。
こんにゃくには食物繊維が豊富に含まれるので、整腸作用があり便通が良くなるからですね。

冬至の七種

冬至に「ん」がつくものを食べると「運」が呼び込めるといわれていました。
うんどん(うどん)、にんじん、れんこん、きんかん、ぎんなん、かんてん、なんきん(かぼちゃ)は冬至の七種といわれ、「ん」が2つついていることから「運盛り」してさらに運を呼び込むための縁起担ぎといわれます。
また、「ん」はいろはにほへとの1番終わりであり、一旦区切りをつけるということから、この日を境に陰から陽に転じるとされる冬至に通ずるという言い伝えもあります。

「ん」がつく食べ物は、冬が旬の栄養価が高いものが多いので、体にいいものを食べて寒い冬を乗り越えようとしていたのかもしれませんね。

ゆず湯

冬至の日にゆずを浮かべたお風呂に入るのは、江戸時代から続く風習といわれています。
体が温まり、血行が良くなるので風邪をひきにくくする効果があります。

江戸時代は、今のように毎日お風呂に入る習慣はありませんでしたので、特別な日である冬至にゆずを浮かべ、厄除けのための禊(みそぎ)として入るようになったのが始まりといわれています。
ゆずの強い香りが邪気を祓うとされていたからですね。
また、「ゆず」を「融通」、「冬至」を「湯治」にかけているという説もあるようです。

ゆずの旬は、10月から12月。
中国が原産で、飛鳥・奈良時代には日本に伝わり栽培されるようになった、歴史の古い柑橘です。

ゆずにはカリウムやビタミン、クエン酸といった疲労回復や美容効果のある成分が豊富なので、お風呂に入れるだけではなく、ジャムにしたりポン酢にしたりしてもいいでしょう。
果肉に比べて皮にビタミンCが多く含まれているので、皮を薄く切って大根と一緒に酢漬けにしたり、お吸い物に浮かべたりすれば香りもよく、健康にもいいですね。

冬至の景色

冬は湿度が低く空気が澄んでいるため、景色がきれいに見えますね。
クリスマスを彩る幻想的なイルミネーションも素敵ですが、この時期にしか見ることのできない美しい自然の景色を見にいくのはいかがでしょうか。

宇治橋の日の出

三重県の伊勢神宮では冬至の前後1ヵ月、内宮にある宇治橋から美しい朝日を見ることができます。
鳥居の真正面から朝日が昇ってくる神秘的な光景は、この時期にしか見ることのできない奇跡のようなひとときです。

ダイヤモンド富士

ダイヤモンド富士とは、富士山の山頂と太陽が重なり合ってダイヤモンドのように光り輝いて見える瞬間のこと。

山中湖では、冬至をはさんだ前後2ヶ月の間、お天気がよければほぼ毎日ダイヤモンド富士を見ることができるそうです。
富士山頂に太陽が重なるのは日の出と日没のときですが、山中湖で見られるのは日没時です。
東京の高尾山では、冬至の頃に日没のダイヤモンド富士を見ることができます。
美しく輝く夕日が富士山の火口に吸い込まれていく光景は、快晴の日により神秘的に見えるそうですよ。

おわりに

「冬至、冬中冬はじめ」
冬至は暦の上では冬の真ん中にあるが、厳しい冬の寒さはこれから始まるという意味のことわざです。
風邪をひかないように、冬野菜がたくさん入ったうどんを食べ、ゆず湯に入って体を温めましょう。

もう少しで今年も終わりです。
元気に新年を迎えたいですね。