節分にまつわる食べ物というと、恵方巻きを連想するでしょう。節分が近づくと、恵方巻きはコンビニエンスストアなどにも並びます。

しかし恵方巻きを食べる習慣は、日本全国共通のものではありません。それどころか節分の祝い方や節分にまつわる食べ物には、かなりの地域差があります。それは、節分が元来は大晦日であったことに起因します。

今回は、食の観点から節分に隠された意外なエピソードをみていきましょう。

節分は年に4回もあった!?

節分が年に1回、2月の立春の日になったのは、江戸時代の頃と言われています。それ以前は、節分は年に4回ありました。

節分の節という文字には、「季節」の意があります。つまり、季節を分ける日、それが節分です。そのため冬と春の境目である立春、春と夏の境目である立夏、夏と秋の境目の立秋、秋から冬に移り変わる日である立冬、この4回が節分とされていました。

節分は大晦日だった

江戸時代になって節分は立春の日のみ、年に1回に変更されました。しかしなぜ、立春の日を節分と定めたのでしょうか。

江戸時代まで、日本の暦は旧暦に基づくものでした。そして立春に該当する日は、旧暦の正月(春節)の前日です。立春とは、冬と春と分ける日であると同時に、年も分ける節目の日であり大晦日でした。二つの節目の意味を持つ日であるため、立春の日を年に1度の節分と定め、特別視したという見方が有力です。

節分には晦日そばを食べていた

節分は旧暦の大晦日でした。そのため古来は、節分の日には晦日そばを食べる習慣が日本にはありました。

ところで古来より日本人は、人生の節目でそばを好んで食してきました。これには、2つの理由があると言われています。

  1. 痩せた土地でや不順な天候でも一定の収穫量を見込める植物であるそばの力を身につける
  2. そばは箸で簡単に切れることから、厄を切り捨て良縁と結ばれる

そばの名産地である出雲と信州には今も、節分に晦日そばを食べる習慣が残っていると言われています。

節分には地元の縁起物を食べていた

大晦日である節分の日には、そばに限らず、各地域の縁起物を食べる習慣があります。

なぜなら大晦日には、稲の豊作をもたらすとされている神、歳神様が各家庭を訪れるひとされていたためです。歳神様は、次の年の命運を左右する神として重要視されてきました。

その年の収穫への感謝を込めて地域の縁起物を用意し、歳神様をお出迎えする。
節分は、来年も食べ物に困ることなく過ごせますようにという人々の祈りが込められた日でした。
地域で採れた食べ物を煮込んだけんちん汁を節分に食べる習慣も、自然の恵を体に取り込む意味を持っていたと考えられています。

なお節分の行事の一つである豆まきに使う豆にも、地域差がみられます。主流は炒った大豆です。しかし北海道や東北と九州の一部地域では、特産品である落花生を撒く習慣があると言われています。

節分で邪気払い

大晦日のメジャーな行事といえば、大掃除でしょう。大掃除は1年で溜まったホコリやチリを祓い邪気も祓って、新年を迎える意味で行われます。

節分には、次年の豊作を願うと同時に、邪気払いする日という意味合いもあります。これが節分に行われる豆まきの由来です。豆を撒く習慣は、室町時代頃に始まったとされています。

豆をはじめとする穀物は、聖なる食べ物と考えられてきました。聖なる食べ物で鬼(邪気)を祓うのが豆まきです。鬼を祓ってくれた豆を年の数だけ食べることで、生命力を自分の中に取り込み、1年を無用息災で過ごせるとされています。

なお年を重ねると共に、自分の年の数だけ豆を食べるのは難しくなっていくでしょう。そのため豆をそのまま食べる代わりに、豆に熱湯をかけ、塩昆布や梅干しで味を整えた福茶をいただくことでも、豆を食したのと同じご利益が期待できるとされています。

節分の豆まきで使用する豆は、あらかじめ炒った豆です。これは豆に火を加えて聖なる力を高めるという意味と共に、生食できない豆を食用に適した状態に整え、さらに万が一撒いた豆を拾い忘れても芽が出ない、という合理的な理由も含まれています。

また鬼を祓うために撒いた豆を拾い忘れ、万が一その豆から芽が出ると、不幸が舞い込むと考えられており、残さず拾うのが通例です。

恵方巻きが全国区になったわけ

今や節分の風物詩とも言える恵方巻きですが、恵方巻きを節分に食べる習慣はいつ頃から広まったものでしょうか。

恵方巻きの由緒には諸説あるものの、大阪商人が縁起物として広めた巻き物が恵方巻きの元祖ではないかという説が有力です。恵方巻きが作られるようになったのは、江戸時代の頃と言われています。

大阪発祥の恵方巻きが全国区になったきっかけについてはさらに諸説ありますが、大手コンビニチェーンの販売戦略が功を奏したというものが有力です。豆まきの習慣が廃れ始めた日本の文化に、新しい潮流を起こそうという思いから広まったものと言われています。

恵方巻きは具のバリエーションも多く、手作りするのも比較的容易なことから、新しい節分の食文化として日本各地に広まっていきました。

おわりに

節分とは、体調を崩しやすい冬から春に移行する時期に、健康と無病息災を願ったのが始まりです。

節分にまつわる食べ物は、いずれも滋味深く体を内側から温める食材が多いという特徴もあります。

節分の食べ物に地域差があるように、今年はご自分なりの節分メニューで楽しんでみるのはいかがでしょうか。